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瀬戸ピース合唱団 稽古場レポート [フォーカス(取材)]

夏休みも終わりに近づく8月の下旬、平和への願いを再確認するフェスティバルが愛知県瀬戸市で毎年開催されている。このフェスティバルは1995年からはじまっており、2017年現在で23年目と歴史も長い。このフェスティバル誕生に呼応するように1998年に活動をはじめたのが瀬戸ピース合唱団。「芝居仕立ての合唱をやってみたらどうか」という声を反映してのことだったという。

この合唱団には、音楽を愛する老若男女30人ほど(小学生からシニアまで幅広い層の市民)が参加し、設立当時からの想いを引き継ぐように合唱と演劇的要素を融合させた「合唱劇/合唱オペラ」という独自な表現方法を用いている。合唱劇/合唱オペラと聞くと耳慣れない人も多いだろう。私もそのひとりだ。本番を間近に控えた8月初旬の夜、瀬戸ピース合唱団の稽古場を訪問し、その独自な表現にふれてみることにした。
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瀬戸ピース合唱団を率いるのは中橋聖一団長。2017年度は、ずっとこの合唱団の演出を担当しきた田中美代子さんが、今回は体調不良でお休みのため、ピンチヒッターとして演出の重責も担う。

◇中橋聖一:合唱オペラは、元々作曲者の林光さんの造語。私は“団体戦の合唱”と“個人技の集大成のオペラ”、これら2つの融合と調和を目指しています。今回のステージ『ごんぎつね』では、舞台上での彼岸花の存在を大切にしました。演出の経験は少ないですが、演出の意図をいかに分かりやすく伝えられるかをポイントにしています。楽しい場面もあり、シリアスな場面もあり、また歌、合唱、ダンス、演技と様々な表現をしているので、色々な楽しみ方を感じて頂ければ幸いです。

稽古場は瀬戸市深川公民館。狭い路地を進んでさらに小さな坂を右に曲がったところに建つ、こちらも歴史を感じる建物だ。会場に到着すると、玄関の下駄箱に履いてきた靴を入れ、二階への階段をあがる。稽古場となっているホールには入口近くに長テーブルが3台ほど。演出の中橋さんをはじめ、指揮者を務める山本高栄さん、ピアニストの野村知子さん、振付の田中りえさんらが並んでいる。…そう、合唱劇/合唱オペラは複合芸術なのだ。音楽の専門家、演劇的要素の演出家、ダンス要素の振付家と、領域の異なる専門家が1つの作品をめざして力を合わせ、稽古中もそれぞれの指導者から的確な指導が重ねられていく。『…これは特殊な現場だな。』と、思わず筆者もうなってしまった。果たして参加者はどう感じているのだろう。

◇団員(女性47歳):歌うことが好きなので、いろんな作品に出会って、いろんな歌を、いろんなキャラクターを演じながら歌えるのが楽しいです。最近では、ダンスにも参加させていただき、ただ振り付けられて踊る、ではなく、こんなことをどんな風に表現するか、という踊り方にも魅力を感じています。一年かけて作りますが、合唱が母体なので、一人が上手でもダメ、みんなでいいものを作り上げるために、本番寸前まで改良を重ね、お客様に喜んでいただけるものをみんなで作り上げる、楽しいと同時に難しいところです。

◇団員(女性69歳):みんなで作品を作り上げるところが楽しい。意見も様々なので、ぶつかり合う時もあるが、それが成長の糧になるかも。寄る年波には勝てず、最近は歌も動きも覚えが悪くなりました。


◇団員(女性25歳):歌と芝居を週一の稽古で並行してこなしていくのが大変です。両方楽しめるところが良いところです。

◇団員(男性22歳):元々歌うことが好きだったので、歌を通じて色々なことが表現できるのは楽しいです。しかし、特別音楽に関する知識もないので、難しく感じることもたくさんあります。

 それぞれ年齢や経験と向き合いながら、歌うことやさまざまな作品や表現との出会い、みんなでつくりあげていくことを前向きに楽しんでいる方が多いようだ。設立からずっと参加しているメンバー、家族が参加していて興味本位ではじめて楽しくなったメンバー、親に連れてこられて、など参加のきっかけはさまざまだが、生活の一部…人生の一部として活動している人が多い印象を受ける。聞けば講師陣も自分たちで依頼し、経済的にも独立しているという。市民自らが自立して長くこうした活動を継続していることには尊敬の念を覚える。生活と文化を両立した優れたライフモデルとして広く知ってもらいたい活動ではないかと思う。

 合唱オペラ『ごんぎつね』に関する詳細なレビューは、ぜひ実際にホールで実感していただきたい思いもあり割愛するが、稽古の中で的確な指示を受けてググっと成長していく合唱団の姿は本番への期待を大いに高めてくれるものだった。講師のみなさんにもお話を伺ってみた。

◇山本高栄:キャストがきちんと”語る”ことはもちろん、合唱団や合唱シーンの”語り”を充実させることに気を付けています。ただ合唱するだけとは違い、(合唱劇/合唱オペラは)動きを伴いますので、どうしても重心や発声がくずれてしまいがちですが、まずは「言葉ありき」でお客さんに伝えられるようにしたいなと。
 池辺晋一郎さんの音楽は、和声がとても凝っていながら、すっと私たちの身体に入ってきて、感動を呼び覚ます、そんな音楽づくりをされています。且つその作曲された音たちは標題音楽になっていますから、ごんぎつねの中の彼岸花でも、ごんのもって来た栗の様子でも、何かしらの事象に音を当てています。まずは合唱団員がそれに気付かないことには伝えることは難しい。
また、新美南吉のごんぎつねは、もう日本中、いや世界中に知られた名作です。この作品の持つ、多面的な深みを追い続けることは、難しかったように思います。
 毎年、様々な作曲家の作品を、このメンバーと演奏していますがそれぞれ違った味になります。ごんぎつねに関して言うと、キャストの心の移り変わり(特に兵十)とごんの屈託のない献身さを音楽で追い続けること。これは、今までにない経験でしたので、大変勉強になりました。
 みなさんが幼い頃に聞いた(知った)「ごんぎつね」と、大人になって、今回体験する「ごんぎつね」はきっと何か違うと思います。それが見どころかな。

◇野村知子:目立たず主張せず、でも支えとして、当たり前に団員さん方が安心して演技できるように、家の土台のような存在になるよう気を付けています。
 今回の作品を演奏するにあたっての難しさは「一つ一つの意味を考えること」です。今回の作品は音楽と歌詞と物語が密接に結びついているので、音、パッセージ、リズム、メロディ、和音といった音楽的要素が劇中のどんな表現を引き出すためのモノなのかを考えて、それを演奏に結びつけるのが難しいと感じました。同時に楽しさにも繋がる事です。
 作曲者のこだわりが随所に見られる作品なので、物語と音楽がどう呼応しているかの繋がりが理解できた時、「あぁ、だからこの場面ではこういう音楽ね!」というのに気付けた時が面白いです。
何を表している音楽かを常に考えるようになりました。
 合唱オペラと題名についている通り、台詞はほとんどなく「歌」で物語が紡がれます。瀬戸ピース合唱団にとっては、初めての挑戦といってもいいくらい、歌の比重が大きいです。
場面が変わる度に移り変わる音楽の曲調や、歌い手や合唱団員の声色の変化を含む表現力にも注目していただきたいです。

◇田中りえ:合唱の妨げにならない振付をしないといけないので制約が多いです。飛び跳ねるような動きや後ろを向くものは向きません。その中で場面を面白くしたり、美しくしたりするために大きく全体を見ながら振付ます。動きメインに考えるダンス作品とは全く異なります。
 指導として工夫しているのは、メンバーの年齢層も幅広く、ダンスがやりたくて参加している方ばかりではないので、慎重に判断します。あとは私が完全に振りを考えて渡す場合と、イメージを伝えてみなさんに自由に動いてもらい個々から生まれた動きを大切にしていく場合があります。どちらにしても自分がここの場面をダンスでどう表現したいかは伝えるようにしています。
 今回はセリフの部分がほとんど無く、まさに合唱オペラ、歌だけでお話が進んでいきます。市民劇でここまでレベルの高いことをする団体はなかなか見当たりません。これは見どころのひとつです。あとは誰もがよく知るお話なので余裕を持って見ていただけるかな?と思います。話が分からなかったということはないでしょう。そのぶん、出演者の動きやダンス、表情など楽しんでいただけるかと思います。


歌う楽しさと難しさの中で懸命に努力している団員のみなさんの姿が印象的で、小さなごんを演じる団員の透き通るような美声にも気持ちが震えた。また、ダンス好きな筆者からすると『ごんぎつね』の中の振付は、単なる振りを超えたムーヴメントに昇華しているように思えて嬉しくなった。歌う身体からほとばしるように生まれる美しい動きは、ごんぎつねの里の秋を彷彿とさせるもの。合唱オペラの特徴を活かした魅力だと思う。

まだまだ本番に向けて、瀬戸ピース合唱団の稽古は進んでいく。ぜひ、本番の勇士を楽しみにしたい。がんばれ、瀬戸ピース合唱団!


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ピースフェスティバルin瀬戸2017
ステージ企画
『合唱オペラ ごんぎつね』
 原作:新美南吉
 脚本:村田さち子
 作曲:池辺晋一郎
 指揮:山本高栄
 演出:中橋聖一
 ピアノ:野村知子
振付:田中りえ

 日時:29年8月19日(土)18:30~
       8月20日(日)10:30~
       8月20日(日)14:00~
     〈開場は各回30分前です〉
 会場:瀬戸蔵 つばきホール
     (愛知県瀬戸市蔵所町1―1)
 料金:大人 2000円
    大学生以下 1500円
    (座席を必要とするお子様は有料です)
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