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Visual Thinking Strategies (step1) [ACOP]

2006年に、ふとしたきっかけで知った京都造形芸術大学の『鑑賞者研究プロジェクト(ACOP)』。私はこのプロジェクトにボランティアとして参加したのですが、とても得るものが大きかったんです。美術も舞台芸術も大好きですが、大学などで専門的に学んだことがない私にとって、批評を書くという行為は果たして許されるのだろうかと悩むこともありました。実際、ATLという屋号はある演出家の方から「知識もないのに評論家なんて名乗ると恥をかくぞ。」と言われた結果、自分のやりたいことをあらわす言葉として編み出したもの(笑)でした。そんな私はACOPと出会い、ようやく自分のスタイルのままでアートに関わっていくことを決意出来ました。アートを言葉にするとき、(知識はもちろんあった方がいいけれど)人はそれぞれが持つ自分らしい言葉で関わっていいのだと。

今回、その京都造形芸術大学のACOPのベースになっている手法(=Visual Thinking Strategies)について学び、実践するための講座が開催されました(8月と来年の3月にも開催されます)。私は思い切って受講してみることにしました。ACOPで学んだことは自分なりに実践してきていますが、もう少し基礎に立ちかえってしっかりと学び直したいと考えたからです。また、自分の関わっているいくつかの場で「自分と向き合い、仲間と智恵を合わせながら、新たなものを創造すること」が必要とされていると感じ、そのためにはきちんとした学びが必要だと考えたからです。

このブログでは、今回学んだことに加えて自分なりの補足と今後への可能性についてレポートしたいと思います。講座内容を網羅的にお伝えするというよりも、講座のエッセンスをご紹介しながら私なりの考察を綴ったものになると思いますので、軽くご笑覧頂けましたら幸いです。

*参加者は美術館関係者や、教員免許状更新講習の対象となっていることから教師の方の参加が多かったようですが、私のように一般人や企業の方も一部いらっしゃるという状況でした。定員100名に対して応募が180名。会場の都合などから最終的には140名に絞っての開催だったようです。



■日時:2011年3月25日(土)-27日(日)

■会場:京都造形芸術大学

講師
・フィリップ・ヤノウィン氏(元ニューヨーク近代美術館(MoMA)教育部部長、NPO法人 Visual Understanding in Education(VUE)創設者・ディレクター)
・大野 照文氏(京都大学総合博物館館長・教授)
伊達 隆洋氏(京都造形芸術大学講師)

■総合監修:福のり子(京都造形芸術大学芸術表現・アートプロデュース学科(ASP)教授、同アート・コミュニケーション研究センター室長)

*今回の講座はVTSの基礎の基礎でした。また、講座の中では小学生の低学年を想定した内容でのお話でしたが、レポートの中では「子どもたち」→「鑑賞者」「参加者」「発言者」というように言い換えをしています。
*レポート中、「VTSを実践している」と表現をしていますが、まだまだ自己流の範囲を越えてはいません。あくまでエッセンスをヒントに模索しているとご理解下さいね。
*下記に講座全体の趣旨などについてご紹介します。*

□カリキュラムの達成目標:対話型鑑賞(VTS)の理論的背景を学び、現代の教育現場における対話型鑑賞の必要性と可能性への認識を深める。

□主な内容
・ヤノウィン率いるMoMA教育部が、なぜ対話型鑑賞に取り組んだのか。その歴史的・社会的背景を振返る
・VTSの基本となる教育理論(アルンハイム、ハウゼン、ヴィゴツキー)の解説
・VTSの実践映像をもとに、質問のタイミングや質問する際の言葉の用い方など、ナビゲイションを成立させるための要素の分析
・実証データに基づく、対話型鑑賞の教育効果の検証
・特別講師である大野照文、伊達隆洋を招き、理科教育および心理学のワークショップを通じて、コミュニケーションを軸にした鑑賞の効果を学習

私にとっては2006年に参加して以来、自分で企画する勉強会やワークショップで活用しているやり方を体系的な論理と照らし合わせることで検証すること、現在抱えている課題についての解決方法のヒントを得ること、新たな活用場面での導入について可能性を模索すること・・・この3つがこの講座での主な目標でした。

全体を通して、私の目的はほぼ達成出来たと感じますが、3日間の講座構成は「講義」と「体験」が織り交ぜられ、立体的に内容を理解出来るカリキュラムが組まれていました。特に特別講師によるワークショップが今回学んだVisual Thinking Strategies(以下VTS)』が実際にどのように活用されているのか(大野氏)を体験し、VTSで行われている対話の構造の基礎を体感すること(伊達氏)が出来たことで、論理だけではピンとこなかったり疑問に感じる部分を埋めることが出来ました。以下に、講義で学んだエッセンスから考えたこと、2つのワークショップの様子などを書いていきたいと思います。


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<講義で得たこと>講師:ヤノウィン氏

□VTS概論について:

VTSをひと言で言ってみると「人は本来“見ること”を通して、思考を深める力を持っている」ということに注目した「(グループによる)対話型鑑賞」方法だと思います。1つの作品を囲んで、複数の参加者と1名のナビゲイターと呼ばれるフェシリテーターがいるという構成。ナビゲイターが鑑賞者の中に生じたモヤモヤを「言葉」として出していけるように「問いかけ」を行い、参加者から出た発言をていねいに「リンク」したり「整理」したりしながら「積み重ね」ていきます。この流れの中で参加者は自分から出た言葉が、作品のどの部分を見て感じたり考えたのかということ(根拠をもとに考えること)を確認します。また、他の参加者の言葉から自分の考えを膨らませたり、修正したりということが起きてきます。
この一連の「流れ」がグループによる対話型鑑賞でいわれる「コミュニケーション」だと思います。参加者は「作品・自分・他者」とのコミュニケーションの中で「根拠に基づく思考」を深め、「多角的な視点」によってさらに「思考を深めていく」ことで成長していきます(これがVTSの概論だと私は理解しています)。

□VTSでナビゲイターが行うこと:

ナビゲイターと呼ばれるファシリテーター(場を活性化する人)が行うことはとてもシンプル。「①問いかける ②参加者の発言を受け入れる」たったこの2つなんです。下記にそれぞれについて掘り下げます(*事前準備では参加者に応じた作品を選ぶことなどもナビゲイターの仕事になります)。

①問いかける:VTSでは3つの問いかけが基本になっています。それぞれの問いかけには参加者の成長を促す働きがあるようです。

「この絵の中で、いったい何が起こっているんだろうか?」
→VTSのいちばん最初に提示される問い。これは英語の「what's going on?」を和訳したもので、なかなか日本語に置換えることが難しいと今回の講義の中でも度々ディスカッションが起きました。(私がACOPに参加したときには「この絵の中には何が描かれていますか?」という問いかけだったように記憶しているのですが、これについては後に別途書きたいと思います)、「この絵の中で、いったい何が起こっているんだろうか?」という問いかけの意図は「描かれていることは認識可能だということを示唆」し、「描かれているものの意味を考えさせる=意味づけ」を行うことで深い思考へと導くことです。

「絵のどこから、そう思ったの?」
→この問いかけは、もっと作品を見て自らの発言の裏付けとなる根拠を探すことを促します。この問いかけを受けることで、発言者は自分でもあまり意識せずに発した言葉について再認識し、事実に基づいた論理の展開が出来るようになります。「根拠」とか「論理展開」というと少し堅苦しく感じるかも知れませんが、この思考をしている時ってとても集中・安定した感覚になります。無意識下で話していると、ふわふわした捕え所のない感覚になっているので、自分でもよく分からなくなってしまったり、他者の発言を理解する余裕がなくなったりしているような気がします。ここでいう「事実に基づいた論理展開」は、話を難しくするための武器ではなく、人が落ち着いてよりよい考えやアイデアを生み出すための、とても有効な呼吸法みたいなものだと思います。

「その他に、もっと発見はありますか?」
→この問いかけは、その場に起きているディスカッションをより徹底したものにする働きをします。見逃していた作品の細部を発見したり、徹底的に検証することを習慣づけるものにもなります。徹底した検証を行うことで作品の中にある真実に迫っていけるようになるように感じます。VTSでこのプロセスを経ていると、短時間の間に1つの作品と何度も違った出会いを重ねるような楽しさが生まれるように感じます。この出会いのステキなこと!集中と安定、流れを味わう楽しさ、更新される出会いへの喜び・・・私はVTSを体験する中でこんなことを感じています。

②参加者の発言を受け入れる:VTSのディスカッションでは、参加者が直ちにフィードバックを得られるように組み立てられています。「自分の意見が聞き入れられ、尊重されると感じられること」で参加意識が促され、この参加意識が成長をぐんと進めてくれます。このためにナビゲーターは下記のように具体的なアクションをとります。

発言者の言葉の通りに作品を指でさす、ジェスチャーで示す。
→参加者が積極的に作品を見ることを促すと同時に、発言者がどの部分について述べているのかを他の参加者が共有出来るようにも機能しています。

参加者の発言を言い換える(パラフレーズ)する。
→参加者の言葉を注意深く聞き、ナビゲイターが別の言葉で言い換えます。言い換えにあたっては語彙のみ変更し、発言者の意見を変更してはいけないという原則があります。パラフレーズを行う意図は発言者の言葉を単にオウム返しするよりも深い受容を示すことが出来ること、他の参加者が発言者の意見を聞き洩らさない、他者の意見を聞き理解することが重要だということの顕示、まとまりのない発言をより的確な意見としてまとめることでそれを聞く参加者の語彙力や文法能力の向上を可能にすることなどがあります。

ディスカッションをオープンにし、どんな意見も受け入れる。
→深い思考力(=批判的思考力ともいえますね)を育てるためには、あらゆる可能性を検討することの重要性を感じることが大切です。VTSのナビゲーターは、中立の立場に立ってディスカッションを進めることを訓練していきます。人間である以上、純粋な中立ということはあり得ないと思いますが、それを加味した上でバランスを取っていくことが現場ごとに求められるように思います。私は大人の方を対象に勉強会を実施し、ACOPで学んだことを活用してナビゲーターをしていますが、参加者の方の個性などが少し分かってきている段階では、ジョークを挿しこんだりしてバランスをとることもあります。この感覚は現場で実践して、その場に応じたものにしていけばいいのかな、と思ったりしています。ただ、この調整もその場で求められている目的によって変わると思いますね。

その他のアクションとして、次のようなことも学びました。

出来るだけ多くの参加者に発言させる
くり返し発言を否定せず、じっくりと聞く姿勢を見せることで聞くことの大切さを示唆する
参加者から出た意見を結んで、思考を関連づける
正解や答えを求められらときには、どうしたら知りたい情報が得られるかを伝える
時間配分は1セッション15分から20分を目途にする
会のクロージングは要約したり同意を求めて終わるのではなく、如何に議論を深めることが出来たかに注目する


□VTSのもとになった考え方:

VTSは発達理論と臨床心理学などを参照にしている部分があるようです。このレポートでは詳しい各論の説明は省きました(・・・書きかけたのですが、難しい表現が多く、このレポートには合わないと思いました:苦笑)。
紹介された学者の名前と理論などをリストアップし、重要だと思われる部分のみメモに起こしたいと思います。

<VTSの名前の由来>

ゲシュタルト心理学派のルドルフ・アルンハイムの研究にちなんで名づけられました。アルンハイムは視覚と思考の関係を説得力を持って論じ、これを「ヴィジュアル・シンキング(視覚による思考)」と呼びました。アルンハイムは「ものを見るという行為は、それを解釈する認知的行為そのものにほかならない」との卓見を示していますが、VTSは「視覚芸術を使って、考えることを学ぶ」ことを目指しているんですね。

<認知発達心理学とVTS>

ジェイムス・マーク・ボルドウィン(アメリカの心理学者)・・・発達段階理論を初めて提唱

ジャン・ピアジェ(スイスの心理学者)・・・発達が支援される環境にあれば、人の認知方法は現在の段階から次の段階へと移行する。子どもが理解出来る事柄は、あらかじめ本人が理解することの出来る少し手前まで来ている事柄のみである(=レディネス/準備性)。レディネスと教育及び学習には可憐性があり、子どもは受け入れる準備が整うまでは次の段階の認知形式を学ぶことは出来ない。新しい段階に移行すると、それ以前の認知方法は新しい方法に統合される。→主として個々の知的発達に注目した。


レフ・ヴィゴツキー(旧ソビエト連邦の心理学者)・・・学習者は周囲にいる人々(教師や大人)と相互に関わることが必要であり、このような相互関係や社会プロセスは学習者が周囲の人を観察することを通じて取り込まれる。この段階ではその関係性やプロセスが完全に理解され、受容されるとは限らないが次第に吸収され、個々の人生の有益な戦略の一部となっていく。学習が生じるのは与えられた課題が個人がすでに習熟している能力の範囲内のものであり、かつ大人やより能力の高い仲間からの介助があったときである。→主として発達を促す周囲の人々の役割により焦点を当てた。

<美的発達:アビゲイル・ハウゼンによるモデル>

アビゲイル・ハウゼン(認知心理学者)

VTSの概念には、このハウゼンのモデルが根幹にあります。ハウゼンはこの概念を生み出すために非指示的な、意識の流れに沿ったインタビュー「ADI=Aestehetic Development Interview」で得られたデータを分析し、丁寧に解析を行いました。詳しい分析経緯はご紹介しませんが、インタビューによって得られた言葉の最小単位から新たな概念を抽出すつ方法は、質的研究法を参照しているように思いました。
(以前、会社で所属していた統計手法や新しい考え方を業務に導入することを検討する研究会に参加していたことがありました。そこで学んだ質的研究法では、インタビューで得られた言葉を解剖して核概念を抽出するグラウンドセオリーという手法を用いていたので、ハウゼンの分析方法に近いなと感じました。質的研究法は主に看護や医療の分野などで活用されているようですね。私の会社では、そのまま用いるにはあまりに手間がかかる(膨大なデータを根気よく分析する必要がある)ため、一部を活用するに留まるとの結論を出しました。それほど、こうした分析には研究者の大きな努力が根底にあるということですね。頭が下がります・・・。)

*ハウゼンの美的発達段階:
第1段階(物語の段階)/第2段階(構築の段階)/第3段階(分類の段階)/第4段階(解釈の段階)/第5段階(再創造の段階)
この発達段階は年齢によらず、鑑賞経験(見るだけでなく、鑑賞に伴う思考プロセスの経験も含む)によって異なるという点が興味深かった(ある調査では、美術館に頻繁に来館する大人であっても1~2の段階にいるとのこと)です。各段階の意味するところは、人の認知方法には特徴があるということでした(例えば、第1段階にいる鑑賞者は自らの感覚や記憶、個人的連想を用いて作品を具体的に観察し、そこから物語を紡ぎ出します。また、「知っていること」「好きなもの」を基準に作品の判断を行い、同時に作品の世界に入り込んでまるでその一部となって物語を展開させるので、そのコメントは発言者自身の感情に彩られます)。ナビゲーターは参加者の発達段階に応じた作品選びと問いかけを行うことを求められるんですね。

*構成主義の考え方:講義に使用されたテキストには書かれていなかったのですが、ヤノウィン氏が板書された言葉の中に「構成主義」についてのメモがありました。ここで述べられている「構成主義」は教育における構成主義のことだと思います。wikipediaで調べてみましたが、ほぼ同じ内容でしたので、wikipediaからの引用をご紹介します。

   教育における構成主義は、子供たちがある対象について、彼ら自身による(それぞれ違った)理解を組み    立てるようなかたちで教育すべきである、あるいは子供たちの中に既に存在している概念を前提に授業を   組み立てる必要がある、という学習・教授理論を指す。ここでの教師の役目は、子供がある対象範囲にお   ける事実や考えを見つけるのを手助けすることである。‐‐wikipediaより引用--

ヤノウィン氏は、3日間の講義の中で実際に参加者とVTSを実施しながら講義を進めて下さいました。教育者の立場として子どもたちに誠実に向きあう姿に強い感銘を受けました。ヤノウィン氏に心からの感謝を・・・。


<ワークショップで得たこと>講師:大野氏・伊達氏

<VTS導入事例/二枚貝を使ったVTS>

VTSは美術鑑賞のみならず、他教科への活用事例があり、成果が出ていることも実証されているようです。大野氏のワークショップでは、実際にVTSがどのように応用されているかを体験するものでした。

取り上げた題材は「二枚貝」。日頃はお味噌汁などで顔を見かけるものの(笑)、その生態については正直詳しいことを知らない存在です。それは他の参加者も同じだったと思います。

□問いかけ:大野氏から「これまで二枚貝と関わった身近な体験例や観察記憶」について話すよう促されました。問いかけは「キッチンなど身近な場所での体験」を訪ねることから始まり、次に「二枚貝が暮らしている場所(海)での体験」へと移り、二枚貝を使って遊んだ記憶から二枚貝の構造について考察するよう促されます。連想を無理なく伸び伸びと飛躍させていける感覚です。

□確認・認識の共有:ワークショップでは思考が自然に深められるようなプロセスで進められていきますが、議論がある段階までいくと二枚貝の貝殻(実物)や、構造をわかりやすく摸した縫いぐるみ、二枚貝が動いている様子が写された動画、スライド写真、カンタンな解説をまとめたプリントといった資料の配布が順を追って組み立てられていき、目で見て確かめたり、手で触って違う感覚から確認をするということが盛り込まれていました。

□思考の発展と具体化/失敗から学ぶ:大野氏は親しみやすい風貌で、おおらかな印象を受ける方ですが、明るく楽しい話し方が場をさらに盛り上げていきます。参加者に発言を促し、ときには発言者がおろおろするような無茶ぶりもするのですが(笑)、かえってそこで発言者が自由に発言し、たり分からないまま素直に言葉を発することが促され、間違っても問題がないという雰囲気を作り出しているように思いました。参加者の中にある智恵を集積しつつ、補足していくことを大野氏はなさっておられたようです。

ワークショップの最後は「自分たちが創造主になったつもりで」二枚貝の構造についてグループでディスカッションしながら絵に描いてみました。思考を図に具体化する作業を通じて、より思考が深まったように思いますし、最後に解説のあった二枚貝の構造についてもストンと腹に落ちるような理解が得られたように思いました。

二枚貝はアート作品ではないかも知れませんが、VTSの手法を通じて思考が深められ、知識が身に着く感覚を強く感じました。


<VTSでの対話を考える/ヘンテコな会話から>伊達氏

伊達氏のワークショップでは、VTSの中でナビゲーターが取り組むパラフレーズ(言い換え)について考察するような内容のワークが行われました。参加者は3名1組になり、あるルールのもとに2名が会話し、1名が観察するというシンプルなもの。ただ、ルールがヘンテコ(笑)。

ルール:相手が話したことについてパラフレーズを行い、同意が得られたら次に進む。同意の表明は「○」「×」など分かりやすいメッセージでジェスチャーとして表すこと。「×」は2度までとし、2度NGの場合は相手に再度発言してもらう。

例)Aさん:あなたの好きなことは何ですか?
  Bさん:あなたは私に好きなものについて知りたいと考えているのですね?
  Aさん:「×」
  Bさん:「あなたは私の好きなことについて知りたいと考えているのですね?」
  Aさん:「○」

ワークはこの会話を行い(5分くらい)、グループごとに今の会話の振り返り、次に全体にフィードバックといったことを1セットと考え、3セット実施しました。

このヘンテコな会話を通じて感じたことは参加者それぞれにあったようですが、「単なるオウム返しは鏡に反射されるような感覚もあり、事実確認をするとき以外に多用すると相手に不快感を与えることがある」「パラフレーズによっては、相手が喜ぶときがある」「パラフレーズでは2つの確認がなされているように感じる。1つは発言を理解しようとしている自分のための確認、2つめは相手に自分が理解したということを伝えるための確認がある」などなど。。あとはVTSの論理を実践する上でのバランス取りについての感覚の体験なども実践として学べたように思いました。パラフレーズはVTSの大きな柱ですが、なかなかに奥深いメソッドで、訓練によって向上していくものだなと思いました。


<これまでの実践体験と今回の講義を通して感じたこと>

VTSでの問いかけ「この絵の中で、いったい何が起こっているんだろうか?」は、私がACOPに参加したときには「この絵には何が描かれているでしょうか?」だったと思います。もしかしたら、私の勘違いかも知れないのですが、この問いかけをずっと自分の主催する勉強会で導入していました。でも、実は内心困っていたんですよ。この問いかけは作品いついて取りかかりやすいのですが、事実が点描のようにしか出てこない。参加者の思考を深めていくためには、次に点を線で結び直す作業が必要でした。このプロセス、なんとなくギクシャクしている感覚もあって少しやりづらかった。でも、今回再確認した「この絵の中で、いったい何が起こっているんだろうか?」という問いかけであれば、鑑賞者の感覚を不確定ではありながらモヤのような状態で取り出すことが出来ます。複数の参加者からの言葉を重ねていくことで、モヤとモヤの重なる部分=議論の輪郭線を取り出しやすくなると感じたんです。「この絵の中で、いったい何が起こっているんだろうか?」という問いかけは、日本人には取っつきにくい印象のある言葉ですが、やはり妥当性があるなと思います。「what's going on?」に代わるシンプルで身近で本質を突くような問いかけ・・・VTSでナビゲイターがそれぞれ工夫をしていく部分かと思いました。


<私が取り組みたいと考えているVTSの別ジャンルへの導入の可能性>

私は普段企業で働いています。業務は新しい企業価値をつくっていこうというものなのですが、そこではこれまでに方法では新たな価値は生み出せないという危機感があります。こうした場面でVTSを導入して本質をついた新たな価値をつくっていけないかと考えています。

もう1つの導入の可能性は、次回あいちトリエンナーレに向けて市民の鑑賞力を高めていくことにVTSを活用していきたいということです。現在も勉強会を実施していますが、この春から新たにライティング講座をスタートします。VTSは筆記能力の向上にも効果があると実証されていますので、ぜひ取り入れて市民ライターが活躍する環境をつくっていきたいと考えています。そうすることで、今の時代を生きていく私たちひとりひとりが「生きる力」(私はアート鑑賞によってもたらされる力をライフジャケットを手に入れることに似ていると感じています)を身につけ、変化の激しい時代を自分らしく、人として健やかに生き抜いていきたいと考えています。トリエンナーレで紹介されるのは先端的な作品が多い。これらの作品を市民ひとりひとりが豊かに感受し、未知のものとの出会いを通して仲間とともに豊かなものへと変換していく・・・この豊かさが、私がVTSを通じて取り組んでいきたいことなんですよ(笑)。。

今回の学びは、まだ基礎に過ぎません。次のステップに移行するには、さらなる実践と研究を重ねなければならないと思います。もちろん、多くの方の助けを必要とすることも忘れてはいません。多くの方のお力をお借りしつつ、これからも進んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!

+++++++++++++++++

長文になりましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございました。レポートの中でも少しふれさせていただきましたが、この講座で学んだことを盛り込んだライティング講座を4月からスタートします。ご興味のある方はぜひご参加下さいね。詳細が決まりましたら、またこちらのブログなどでご紹介して参ります。

ありがとうございました!





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コメント 2

数寄和 あさだ

「この絵の中で、いったい何が起こっているんだろうか?」
観たり読んだりする私たちと一緒に時間軸を進むお芝居や物語とちがい、一枚の絵のなかで、ひとつの世界が成り立ち、観る私たちの前に存在している・・・。
そう考えると、このなかで、何かが起こっているわけですよね。
動かない一枚の絵のなかで、描かれているさまざまなもの。
「何が描かれているのでしょう。」も「よく観ましょう。」も、解りやすい導入でありながら、広がる世界を発見するためには、あまりに解りやすい導入なのかも知れませんね。

長文、とても、楽しく、拝読しました。
また、お会いできます日を楽しみにしております。
by 数寄和 あさだ (2011-04-03 12:43) 

ATL

あさださん。

京都ではお世話になりました!
最終日には甘えさせていただき、本当にうれしかったです。

次回お目にかかれるときには、怪我は完治してると思いますので
元気いっぱいな私だと思います(笑)。

コメント、ありがとうございました☆
by ATL (2011-04-03 22:20) 

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