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第8回愛知県芸術劇場演劇フェスティバル/ミクニヤナイハラ プロジェクト『3年2組』 [フォーカス(取材)]

ダンスシーンでも、アート界でも、ジャンルを越えて新しい表現が日々生まれています。それは、演劇の世界でも同じようですね。

第8回目を迎える“愛知県芸術劇場演劇フェスティバル”の今回のテーマは「超える」。超えるべきもの、越えられないないもの、その境界にはいったい何があるのでしょうか。自分と他者を隔てるその間には、想像以上に距離があるかも知れませんし、もしかしたら私たちの間には境界なんて存在しないのかも知れません。何気なく過ごしている日々の中には、いつも自分と他者との関わり合いがあって、そこで笑ったり、泣いたり、怒ったりしている私たちがいます。その感情は、二者を隔てる“何か”によって生まれてくるといってもいいでしょう。

 

 

 

“境界”というキーワードに、ずっとこだわりながら作品をつくっているカンパニーがあります。横浜を拠点に活躍するコンテポラリーダンスの、Nibroll(ニブロール)。彼らは、振付家の矢内原美邦を中心に、映像・音楽・衣装・美術・建築など各分野で活躍するディレクターによる集団です。固定のダンサーを置かずに作品ごとに舞台をつくっていくスタイルは、さまざまなジャンルから注目されていますが、今回は“演劇”で、愛知に初登場となります。

 

取材で名古屋を訪れていた、矢内原美邦さんと映像ディレクターの高橋啓祐さんにお話を伺ってきました。

(2月22日(金)@愛知県芸術センター)

 

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今回の作品『3年2組』は、2005年の東京・吉祥寺シアターのこけら落し公演が初演。それまでにもダンスだけに囚われないオーバージャンルな活動を展開していたNibrollでしたが、この公演を契機に演劇作品の制作も始動。演劇とダンス…その境界にある“言葉”の存在が、矢内原にとっては2つのジャンルを越えていく可能性として魅力的だったのではないでしょうか。膨大なテキストが使われるこの作品は、通常の速さでのやりとりでは上演時間内に収まらないといいます。

 

矢内原「この作品では、“物語”は、それほど重要視していないんですよ。ただ、テキストを上演時間内に役者に言ってもらうために、スピードを上げてもらっています。」

 

膨大なテキストを、時間内に納めるためにカットするのではなく、話されるスピードを上げてしまうという発想。お話を伺いながらハッとさせられます。次々と身体から出力されていく言葉は、役者から相当体力を奪うのではないでしょうか。

 

矢内原「役者は大変だと思います。ダンスシーンも織り込まれていますが、思うように踊れない。それでも“踊って”と言われますからね。」

 

Nibrollの作品は、映像、音楽、衣装、ダンサーの身体という、複合的に表現が重なり合う世界ですが、その世界のキーワードの1つには“過剰さ”があげられると思います。振付も、ゆるやかにコンタクトしながら互いを見いだすような、そうした甘い動きではなく、ガンガンと二者が身体を激しくぶつけあう“痛み”をともなったもののように思えます。

 

矢内原「日常のふとした瞬間に“今、私は生きている。”と感じる…でも、それは本当にそうなのだろうか?と思うのです。生きているという実感は、“届かない/出来ない”だから“届きたい/可能にしたい”と手を伸ばす、そうした想いの流れだと思うのです。ですから、この作品では役者に相当な負荷をかけて“うまく話せないし、うまく踊れない”、だから“話したいし、踊りたい”という演出をしています。」

 

 過剰なほどの負荷の中で進んでいく舞台は、痛みを伴う…けれども、そこには今を確かに生きている若者たちがいるのですね。 

 

今回の演劇フェスティバルのテーマ“越える”。フェスティバルのホームページには“時空も空間も越えたい”とありますが、時間というものを矢内原さんは、どう捕えているのでしょうか。

 

矢内原「時間は、カチコチとは進まないと思っています。過去の思い出を振り返るようなときには、時間を飛んでいくような感覚がありますよね。未来のことを想像するときもそうです。この“時間を飛んでいく感覚”は、表現の根源的なものの1つだと思うのです。個人の中で自由に行き来していくことが出来る…本当の自分の時間は時計に沿ってあるのではなく、ここにあるのだと。」

 

『3年2組』のストーリーは、“小学生の時埋めたタイムカプセルを掘り起こすために集まった3年2組の同級生”が“過去や未来をいききしながら記憶のなかでタイムカプセルを探す”というもの。時空を超える役者の身体、舞台に広がる映像と音楽。それらがどんな風に観客に伝わるのでしょうか。また、この物語の中で同級生たちが探していたタイムカプセル。それは“結局みつけることはない。”のです。現実の中の可能性と不可能性を見つめる演出家としての矢内原さん。しっかりと1つ1つ語られた言葉は、やはりどこかに痛みをはらみつつ、同時に時代を進んでいく力強さも感じさせるものでした。2007年にソロダンス作品『さようなら』で第1回日本ダンスフォーラム賞を受賞し、ヤナイハタミクニ プロジェクト(演劇)では『青ノ鳥』で第52回岸田國士戯曲賞最終選考作品となった彼女。その多彩さと、才能の奥に隠された繊細さは、こらからも魅力的な作品をつくりだしていくことでしょう。

愛知初登場。演劇ファンも、ダンスファンも、最新の映像や音楽をチェックしている方にも見て頂きたい作品。ぜひ、劇場へ足をお運び下さいね。

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★第8回愛知県芸術劇場演劇フェスティバル参加作品『3年2組』

/ミクニヤナイハラプロジェクト 

 

☆日時:2008年4月18日(金)~20日(土)

☆場所:愛知県芸術劇場小ホール

 

作・演出・振付 : 矢内原美邦

出演:足立智充/荒川修寺/稲毛礼子/上村 聡/関 寛之/渕野修平/三坂知絵子/矢沢 誠/山本圭祐

 

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◎矢内原美邦
大学で舞踊学を専攻、在学中にNHK賞など数々の賞を受賞。ブラジル留学後、1997年に、ダンス・衣装・映像・美術・音楽などの各分野で活躍するアーティストからなるカンパニー「ニブロール」を結成。国内外のダンスフェスティバルにて公演をおこなう。2000年、千年文化芸術祭入選、02年、ナショナル協議委員賞受賞。

◎ミクニヤナイハラプロジェクト
2005年、ニブロール主宰・振付家の矢内原美邦が、吉祥寺シアター(東京)のこけら落とし公演を契機に、自らが劇作・演出を手がけるミクニヤナイハラプロジェクトを始動し、『3年2組』を発表。同プロジェクト第2弾となるソロダンス作品『さよなら』が第一回日本ダンスフォーラム賞を受賞、第3弾『青ノ鳥』が第52回岸田國士戯曲賞最終候補作品となるなど、演劇/ダンスの両分野から高い評価を受けている。www.nibroll.com


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